洋食

『神戸と洋食:江弘毅(著)』本でわかる洋食の老舗名店とその歴史

神戸には100年以上昔の有名ホテルや豪華客船の味を引き継ぐ、洋食の老舗・名店があります。

開港から始まる神戸の洋食文化の発展を紐解きながら、厳選された洋食屋さんを紹介しているのが

『神戸と洋食』

という本です。

著者は関西の人気グルメ雑誌「ミーツリージョナル」元編集長の江弘毅さん。

2年がかりで書き上げられた本書で、神戸の洋食文化を体系的かつ楽しく学べました。

以下、詳しく紹介します。

本書の構成

『神戸と洋食』の構成は大きく下記の2つです。

  • 洋食文化発展の詳しい歴史
  • 伝統の味を現代に引き継ぐ、老舗洋食屋・名店の紹介

著者によると、神戸の洋食文化は、次の3つの系譜に由来するそうです。

  1. ホテル
  2. ホテルと船以外

それぞれの成り立ちについて、豊富な参考文献と取材を元に、詳しく解説されています。

各章の最後には、読者がおそらく一番知りたいであろう

「現代に味を引き継ぐ名店・老舗」

の紹介があります。

お店の概要だけでなく、取材しないと分からないような裏話、おすすめ看板メニューにも触れつつ

よだれがでてきそうな料理の写真、内観・外観など、とにかく素敵な写真がたくさんあって、見ていて楽しいです。

 

 

 

では、ネタバレにならない程度に、3つの系譜とお店の一部を紹介します。

1つ目の系譜:ホテルの洋食

神戸にやって来た外国人が滞在する外国人居留地に『オリエンタルホテル』が誕生したのが1870年(明治3年)です。

鎖国が解かれ、神戸港が開港して間もない当時、オリエンタルホテルは外国文化の発信地として重要な役割を果たしました。

明治15年(1882年)頃のオリエンタルホテル。オランダ・ライデン大学所蔵。 『読者所蔵「古い写真」館 幕末から昭和へ』(1986年、朝日新聞社)P23 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

ホテルのレストランで洋食が出されたり、厨房にいた日本人コック達がそこで腕を磨いたり、彼らが独立するなどして、神戸で洋食文化が発展していったそうです。

ホテルの味を引き継ぐ神戸の洋食屋
  • Sion
  • L’Ami

参考引用図書:『神戸と洋食』p62~76

▼L’Amiに実際に行った食レポはコチラ

lami-kobemotomachi-yoshku
【食レポ】洋食屋L'Ami (ラミ)でオムレツとカニクリを食す平日のランチタイム、神戸元町にあるL'Ami(ラミ)という洋食屋さんに、男1人で行ってきました。 L'Ami(ラミ)は旧オリエンタ...

▼Sionに実際に行った食レポはコチラ

rami-kobe-motomachi-yoshku
【食レポ】旧オリエンタルのカレーをSion(シオン)神戸元町で堪能神戸元町から少し西のエリアにある「Sion (シオン)」というお店に、神戸在住のブロガーが1人で行ってきました。 伝統の味を受け継...

2つ目の系譜:船の洋食と老舗名店

飛行機が発明される以前、国際貿易の主役は船でした。

お金持ちのための豪華客船の厨房では、コック達が料理の腕を磨いていました。

豪華客船は、当時コックの最高峰が集う場だったそうです。

 

大阪商船『ぶら志゛る丸』一等食堂 野間恒・山田廸生『世界の艦船別冊 日本の客船1』1991年、p.81(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

船で腕を磨いたコック達が、陸に上がって洋食屋を始めたのが2つ目の系譜だそうです。

船の味を引き継ぐ神戸の洋食屋
  • グリルミヤコ
  • ビストロジロー

参考引用図書:『神戸と洋食』p104~116

3つ目の系譜:ホテル・船以外の洋食

第二次世界大戦後に腕利きのコックを集めて始まった店、神戸港以外の港にルーツを持つお店など、独自に発展して今も愛される名店が3つ目の系譜だそうです。

独自の系譜を引き継ぐ神戸の洋食屋
  • グリル一平
  • グリル末松
  • 洋食屋ナカムラ
  • 洋食屋・双平

参考引用図書:『神戸と洋食』p136~150

3つの系譜を見ていると、まさに港街神戸らしいと感じます。

この記事ではざっくりとしか触れませんが、本の中では

○○年に△△さんが□□を創業し…と歴史書のように詳細な解説があり、洋食の歴史が事細かに紐解かれていました。

洋食と一緒に学べる雑学

洋食に関連して、神戸周辺の様々な雑学が学べるのも本書の面白さです。

神戸在住者の僕が読んで、初めて知ったことはこんな感じ。

  • 氷を使わないコウベハイボールという飲み方のルーツは「サンボア」というバーだったこと
  • 神戸元町で行列ができるコロッケ屋さんは、歴史が相当古いこと
  • 小豆島のオリーブ以前に、神戸に大きなオリーブ園があったこと
  • ウィルキンソンの炭酸が兵庫県の宝塚市で湧き出していたこと

などなど、長年関西に住んでいても、知らなかったこと、興味深いことがたくさんあります。

洋食文化の歴史は、関連する様々な産業との歴史でもあると感じました。

まとめ

『神戸と洋食』は、神戸における洋食文化の教科書のような本でした。

在住者が読めば「いつも素通りしていたあの店に、こんな深い歴史があったんだ」という発見がたくさんあるでしょう。

本書に書かれている通り、洋食の系譜をたどっていけば、一皿の味わいがより深くなる。

そして、神戸がもっと好きになる。

洋食人気の理由は、庶民的な価格帯で高級ホテルの味を楽しめるコスパの良さかもしれません。

だからこそ、行列に並んででも食べたいし、こういう本を読んでいると、行きたくてウズウズしてしまう…

『神戸と洋食』を読んで、ネットのグルメサイトの口コミだけでなく、書籍で信頼性の高い情報を得るのも、たまには良いなと思いました。

特に、神戸で洋食巡りをしたい、神戸の食の知識を深めたい、デートで外さない洋食屋を探したい、という人にはおすすめですよ。

▼『神戸と洋食』詳細はコチラ

気になる関連記事